ときおりの上海だより 夏天


上海の夏は身体も思考も停止状態。
連日体温を超えるほどの熱、肌に纏わり付く湿度。
何も出来ぬ故、無為自然に徹するのが一番。
それでも、立秋をすぎると漸く朝夕に涼風が吹くようになった。

食も細る時期、市場では緑黄色の野菜が豊富にならぶ。
黄瓜、へちま、冬瓜、西瓜、緑豆でできた寒天や涼皮も並ぶ。
不思議と身体の熱を沈めてくれる食物ばかり。
旬のものを頂くとは、まさ理にかなうこと。

中国の人々は、冷めたものより、必ず温かいものを食す。
汗ばむ程に熱量をとり、体内に滞るものを発散させて気の流れを良くする。
古来からの教えである。漢方の古書にも夏は必ず生姜を取るべしと。
以前は氷入りの飲料をを飲む人はほとんどいないかったが、
最近は冷たい飲料を好む人が多くなった。
体内の熱は奪われ易い。
考えてみれば、体温を一定に維持するのは並々ならぬ労力。
有難きかな、体は無言で働き続ける。

お隣のお婆さんにいただいた南瓜でお粥。何気ないものがとてもおいしい。

数年前は路に西瓜の皮がころがり、
お腹を出して下着姿で歩く男衆、木陰で昼寝をする老人。
夕涼みに表に出て集う近所の老婆と子供たち。
そんな光景もだんだんと消えてしまった。
上海の街の外観美化政策にて、至る所で施行工事が行われているこの頃。
整えられつつある街はどこか殺風景。

建物の合間から見える、大きな白い雲と青い空。
地平線が見えたら、人々の視野も広がるだろうに。

乌鲁木齐路の空き地。もうすぐ商業施設の建設工事がはじまる。
大都会では地面から空が見渡せる場所はとても贅沢です。